世代を超えて愛せる服との出会い方
「Daja」板倉直子さん ×「BRITISH MADE」尾山優恵さん

「Daja」板倉直子さん×「BRITISH MADE」尾山優恵さん

イギリス好きなふたりは、年齢を超えてすぐに意気投合。
おしゃれから仕事の話まで、おしゃべりに花が咲きました

3回にわたりお届けしてきた連載企画、最後の内容は、ともにマカラスターを取り扱う者同士の対談です。
Dajaの板倉さんは52歳。「ブリティッシュメイド 銀座店」で働く尾山さんは27歳。
親子ほど年の違う2人ですが、イギリスが好き、トラッドが好き、という点はぴったり同じ。だからこそ、洋服選びから、接客まで、「そうそう、そうなんだよね」と共感することばかりでした。
ブリティッシュニットも、上質な革の靴もカシミアのストールも、手に入れてすぐにその魅力を理解することはできません。日々袖を通しながら、そのよさを知り、手入れをしながら少しずつ自分に寄り添ってくれるプロセスを楽しむ……。
世の中には、時間をかけないとわからないことがあります。そんなものとの出会い方をふたりが語り合いました。

「Daja」板倉直子さん

おしゃれの入り口は、イギリス好き

尾山:私は名古屋出身で、大学を卒業してすぐ「マカラスター」を取り扱う渡辺産業に入りました。今27歳です。

板倉:私は島根県出身で、Dajaで働き出したのが23歳です。

尾山:私はDajaさんに伺ったことはないんですが、板倉さんのインスタグラムをずっと前からフォローしていて、コーディネートやお店の様子をいつも拝見しています。レディスだけに特化して、あれだけ作りのいいものをそろえているお店って珍しいと思います。

板倉:私のことは、どこで知ってくださったんですか?

尾山:母がもともと板倉さんが取材されていた「大人になったら着たい服」を読んでいたので。母は今53歳です。

板倉:わあ、私は52歳だから、お母様と同世代ですね。尾山さんはどうして渡辺産業に入ろうと思ったのですか?

尾山:もともとイギリスが大好きだったんです。ハリーポッターがきっかけでした。大学時代にはロンドンに留学しました。そこで知ったのは、モノに対してみんながとても真摯に向き合っているということ。洋服もメンズ服のように作りがしっかりしているものに興味があったので、そういう関係のお仕事ができたらなと思っていたんです。

板倉:私も若い頃、お金を貯めてはフランスやイギリスに通っていました。初めてイギリスに行ったとき、一番驚いたのは、洋服屋さんでもカフェでも、若者から年配の方までいろんな年代の方がいらっしゃるということ。日本って、若者の店に年配の方は行きませんものね。伝統的な洋服を、代々受け継いで着るという習慣も、本当にかっこいいと思いました。

尾山:イギリスにはいろいろな入り口がありますよね。今も私は仕事をしながら、日々イギリスのよさを再確認しているところなんです。

「BRITISH MADE」尾山優恵さん

ほどよい固さがあるのに、ふんわり柔らかい。
ブリティッシュニットの魅力は、毛質のよさです。

板倉:尾山さんはニットを選ぶときに、どんなポイントで見ますか?

尾山:他の服に比べて、ニットは毎年必ず出番がやってくるアイテムだと思うので、着心地をいちばん重視しています。「マカラスター」のニットは、他にはないツヤ感と弾力が魅力だと思います。寒さに厳しい地方で育ったブリティッシュウールを使っているので、毛質がしっかりしているというか……。ほどよい硬さがあって、着崩れしにくいところも気に入っています。色合いが独特で、いろんな色が入っているのが面白いなと思いますね。一枚で主役になると思います。

板倉:ドロップショルダーなので、ざっくりしつつ華奢に見えてかわいいんですよね。

尾山:首の空き具合も、下に重ね着などがしやすいんです。「マカラスター」は、シルエットがふんわりしたものが多いので、私はパンツを合わせることが多いですね。全体が重たくなりすぎないように、レングスには気をつけています。太いパンツのときには、少し足首を出したり、細いパンツのときにはしっかり長さを出したり。

板倉:私はローゲージ好きなんです。9〜10月はジャケットを着るのでハイゲージニットを着ますが、11月から1月はほぼローゲージセーターですね。「マカラスター」のニットは、動きやすくて軽くて、まさに私のライフスタイルにぴったり。調べていてわかったんですが、ブリティッシュウールって、世界のウールのシェアの3%しかないそうです。すごく貴重なんですね。私は、20代の頃に買ったブリティッシュウールのカーディガンを、今なお現役で使っています。本当に一生着られるクオリティだと思います。

尾山:ブリティッシュウールは、弾力性があって毛質がしっかりしているので、もともとはカーペットに使われていたそうです。

板倉:伝統的な技法で、奇を衒わずに代々作られているというのが魅力だと思います。長く使っていてこそわかるよさって、いいなあと思います。

マカラスターのセーター

時間をかけて味わう
イギリスならではの小物を愛用中

板倉:革製品など、小物も魅力的なものが多いですよね。

尾山:一見地味というか、スタンダードなものが多いんですが、使っていく中で経年変化を味わえるのが楽しいですね。時間をかけてこそ見つけられるものがいいなあと思うんです。私にとって、その代表例が靴かな。今日は「ジョセフ チーニー」のミリーというモデルを履いています。入社してすぐに買ったもの。イギリスの靴って、最初はちょっと硬いんですが、履いていくと、少しずつ自分の足型に馴染んでいきます。2年目ぐらいからやっとフィットしてくるので、時間はかかるんですが。

板倉:確かに時間はかかりますよね。でも、自分の暮らしに寄り添ってくれる実感って、本当にいいものだと思います。最近では、女性も靴を磨いたりと、手を入れながら愛用する楽しみを知ってくださる方が増えていますね。靴に投資する方は以前に比べて増えたなあと感じます。リペアしながら、長く履いてくださる方を見ると、素敵だなあと思いますね。

尾山:私もイギリスで実際にこういう靴を履いている女性を見て、かっこいいなあと思ったのが、この靴を買うきっかけでした。決してピカピカではなかったけれど、一緒に歩んできたからこその馴染んだ姿が素敵でした。

板倉:ジョンストンズのストールも育つ道具のひとつだと思います。ちょっと背伸びをしないと買えない金額なので、これを仕入れるときには、大丈夫だろうか?と随分迷いました(笑)。でも、自分でまずは使ってみて、カシミヤが洗うたびにどんどんいい風合いになるのを実感し、今では自信を持っておすすめすることができるようになりました。時とともに美しさが増すことを、ちゃんと説明することで、値段は高いかもしれないけれど、それ以上の豊かなお付き合いができるとわかっていただけるようになったかな。

ジョセフチーニーの革靴

お客様の本当の思いを引き出せるように。
接客はいつも大切な友人に対するつもりで。

板倉:尾山さんはお店で接客をするときに気をつけていることってありますか?

尾山:お客様の本音を引き出すことが一番大事かなと思っています。どういう思いで、どんな風になりたいと思って来てくださったのかを引き出せるように……。まずは笑顔で明るくお迎えして、リラックスしていただいて、関係性を築いた上でご提案させていただく、ということを心がけています。

板倉:私も尾山さんと同じように、まずはその人の本質を見られるようになりたいですね。会話をしながらライフスタイルを伺って、その方がお似合いになりそうな服を本当に一生懸命考えるんです。時間があったら、「とりあえず着てみますか?」と提案します。その中で気に入ったものを1点買ってもらえれば嬉しいし、その日でなくても、何かのタイミングで思い出してもらえたらいいなって思いますね。いつも自分の大切な友人に薦める気持ちで接客をしています。

トラディショナルなブリティッシュニットがあれば、
冬のおしゃれの幅が広がります。

尾山:「マカラスター」のニットを買ってくださるお客様は、すごく幅広いですね。上質なものを長く着たいというマインドのある方が多いように思います。シルエットは奇を衒わないスタンダードなものが多いので、どんな年代の方にもマッチすると思います。

板倉:Dajaでもそうですね。いろいろなお客様が「いいね」と言ってくださいます。ある程度雨をはじいてくれるので、イギリスのカントリーサイドの洋服が、松江の暮らし方や、Dajaのお客さまに合っていると思います。すごく軽くて柔らかく着心地がいいので、一度袖を通すときっと、手放せなくなると思います。私自身がそうでしたから(笑)。

尾山:パンツとも合いますが、チェックのスタンダードなスカートとの相性もいいんですよ。

板倉:トラディショナルな服は、どんなアイテムとも組み合わせられるところがいいですよね。無地でワントーンでまとめても上品だし、チェックやストライプなど柄と合わせてもかわいい。1枚持っていると、いろんな組み合わせで楽しめて、冬のおしゃれの幅がぐんと広がると思います。

マカラスターのセーター

「インタビュー」「スタイリング」「対談」と板倉さんとともに続けてきたこの連載企画。
様々な角度から「マカラスター」の魅力に迫りました。
この秋、ブリティッシュニットをワードローブに取り入れてみたい、と思われた方は、
「マカラスター」の取扱店、「Daja」や全国で8店舗を展開する「ブリティッシュメイド」に足を運んでみてください。

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[連載]どんな年代の女性も自分らしく装える。板倉直子さんによる「マカラスター」ニットのコーディネート
[連載]人気のセレクトショップ「Daja」ディレクター 板倉直子さんが語る「マカラスター」の魅力と、大人のおしゃれ

 

Profile


「Daja」ディレクター 板倉直子さん
島根県松江市のセレクトショップ「Daja」ディレクター。古着店勤務、会社員を経て「Daja」に入社。仕入れから販売まですべてを任される。38歳の時に店を受け継ぎ、トラディショナルをベースに自分らしい着こなしを提案し続けている。日々のコーディネートを紹介するインスタグラムも人気。2019年9月店をリニューアルオープン。著書に「大人のためのかしこい衣服計画」「頑張らないおしゃれ」(ともに主婦と生活社刊)がある。
http://www.allo-daja.com/
www.instagram.com/itakuranaoko

photo Masahiro Yamamoto text Noriko Ichida