ボトムスとのバランス、色の組み合わせで、
1枚のセーターが2倍、3倍に活躍
1786年、スコットランドのニュー・ラナークに紡績工場が建設されました。そこで紡がれたウール糸を使い、3代にわたってニットウェアを製造してきたのが、マッキノン家です。1981年にグラスゴーにハンド・フレームに特化したニット工場を設立し、新しいブランド「マカラスター」を発表しました。今なお、スコットランドで作った糸で、スコットランドの地元の人がハンド・フレームで作っている。それが、「マカラスター」のニットウェアです。
「初めてイギリスに行ったとき、衝撃を受けたのが、あらゆる年齢の人が同じ店を訪れるということ。日本では、若者が行くお店と、年配の人が買い物をする店がはっきり分かれているけれど、イギリスではひとつの店にあらゆる年代の人が足を運ぶんですよね。いいものは年齢を超えて着こなせる……。私もそんなおしゃれを楽しみたいと思います」と板倉さん。
そこで連載第2回目は、ご自身と、「マカラスター」の国内随一の取り扱い店であるブリティッシュメイドの20代のショップスタッフのために、「マカラスター」のニットを使ったコーディネートを組み立てていただきました。
テーパードパンツと合わせれば失敗なし!
同系色でまとめれば上品に
この日、板倉さんが「マカラスター」のグレーのミドルゲージニットに合わせたのは、「ハバーサック」のテーパードパンツでした。
板倉:グレーのグラデーションのトーンで合わせてみました。ミドルゲージニットは、ボリューム感があるので、テーパードパンツですっきりしたラインを作ります。この「マカラスター」のハイネックニットは、ふんわりと柔らかくて着やすいこと! そして裏編みなのがいいですよね。体のラインを拾わないから、シルエットがきれいに見えるんです。20代、30代の女性はもちろん、私のように50代、そしてもっと年配の方でも安心してゆったりと着こなせると思います。タートルネックのニットは多いんですが、こんなハイネックはなかなかないと思います。首回りがもたつかず、すっきり見えます。袖が長いので、ちょっと折って着てもかわいいですよね。
この上にバサリと羽織ったのが、板倉さんがディレクターを務める「ハンドルームウィメンズ」のダッフルコートです。
板倉:大人が着るダッフルコートを作りたいなと思って作ったものです。メルトンのダッフルコートは重たくて、肩が凝るけれど、これはヤクのウールを使っているので、驚くほど軽いんですよ。アームホールをゆったり目にしたのも特徴。厚手のニットの上にバサッと羽織ってももたつきません。ミドルゲージニットにダッフルコートの組み合わせって、どうしてもカジュアルになりすぎるんですが、これなら大人っぽいスタイリングになりますね。
ワイドパンツと合わせるときには、
白を効かせてメリハリを
「マカラスター」の輸入代理店直営店でもある「ブリティッシュメイド 銀座店」で働く尾山優恵さんは、27歳。彼女のために、板倉さんがスタイリングしたのは、「マカラスター」のタートルニットと、「ガーデンズオブパラダイス」のリネンシャツ、そして「ハンドルームウィメンズ」のレジメンタルストライプのワイドパンツでした。
板倉:私はいつもその方の骨格からスタイリングを考えるんです。尾山さんは背がすらりと高くて、体型がとてもきれいだったので、すぐにワイドパンツがいいなと思いました。秋冬のおしゃれの楽しみって、チェックやストライプなど、ブリティッシュトラッドの柄を取り入れることだと思うんです。このレジメンタルストライプのワイドパンツもそんなアイテムのひとつ。グリーン、ネイビー、白の組み合わせは、ちょっと辛口で大人っぽくなります。
ミドルゲージニットにワイドパンツというビッグ×ビッグシルエットの組み合わせなのに、すっきり見えるのは、白が効いているから。
板倉:尾山さんは、首も細くてすらりとしていたので、タートルにスタンドカラーシャツを重ねて、首元と裾から白いシャツをちょっとのぞかせてみたんです。ニットの下にリネンシャツを合わせると、肌触りがさらっとして、熱がこもらず気持ちいいんですよ。そして、1割の白があることで、バランスがすごくよくなります。レギュラーカラーのシャツだと襟が出すぎるかなと思ったので、チビ襟のスタンドカラーシャツにしました。シャツを中に着ることで、タートルを低めに折ることができます。間にシャツをかませることでニュアンスが生まれるので、こういうスタイリングを楽しめますね。
冬に「白」を着るのがおすすめ。
ツイードのワイドパンツでブリティッシュトラッドに
20代の頃から、お金を貯めてはフランスやイギリスに行くのがライフワークだったという板倉さん。イギリスで初めて出会ったのがブリティッシュニットでした。
冬はどうしても濃い色の服が多くなるので、優しいオフホワイトのセーターが着たくなるという板倉さん。
板倉:「マカラスター」のニットは糸が柔らかいので、タートルネックでも首回りがチクチクしないのがいいですね。ふんわりと優しいシルエットで、ミドルゲージでも学生っぽくなりません。今回は、ブリティッシュトラッドの王道「ハンドルームウィメンズ」のツイードのワイドパンツを合わせてみました。重たくなりすぎないように、裾を折りあげて、やや短めに履いています。
このシンプルなコーディネートにストールでアクセントをつけるのがいつもの方法。
板倉:首元に「ドレイクス」のマフラーをコンパクトに結んでもいいし、「ジョンストンズ」の赤いチェックの大判ストールを合わせることも。これは、お店にいるときの私の定番コーディネートですね。ベースをシンプルにして、ストールで変化をつけると、1枚のセーターを2倍、3倍に楽しめると思います。
お手本にしたいのは、
イギリスのカントリーサイドのメンズスタイル
尾山さんのもうひとつのコーディネートは、マスタード色などオークル系の糸が混ざったハイネックニットセーターに、コーデュロイのパンツ。これに「ハロータウンストアーズ」のジャケットを合わせました。
板倉:このコーディネートのポイントは、ミドルゲージセーターの上に何を着るかです。私がいつも参考にするのが、イギリスのカントリーサイドのメンズスタイル。この「ハロータウンストアーズ」は、もともとはイギリスの学生服などを作っていたブランドです。一重のジャケットなのでかさばらず着やすいし、ミドルゲージセーターに重ねたらかわいいですよね。セーターの下にチェックのシャツを重ねると、よりイギリスっぽくなります。
全体の絶妙なバランスはさすがのスタイリング。
板倉:上半身をコンパクトにスタイリングしてみました。本来は細身のパンツが合わせやすいんですが、バリエーションとして、こんなワイドパンツでも合わせることができます。ベレー帽をかぶって、上にポイントを持ってくるのもいいですね。
[連載]人気のセレクトショップ「Daja」ディレクター 板倉直子さんが語る「マカラスター」の魅力と、大人のおしゃれ
Profile
「Daja」ディレクター 板倉直子さん
島根県松江市のセレクトショップ「Daja」ディレクター。古着店勤務、会社員を経て「Daja」に入社。仕入れから販売まですべてを任される。38歳の時に店を受け継ぎ、トラディショナルをベースに自分らしい着こなしを提案し続けている。日々のコーディネートを紹介するインスタグラムも人気。2019年9月店をリニューアルオープン。著書に「大人のためのかしこい衣服計画」「頑張らないおしゃれ」(ともに主婦と生活社刊)がある。
http://www.allo-daja.com/
www.instagram.com/itakuranaoko
photo Masahiro Yamamoto text Noriko Ichida